国家公務員(とくに自衛官)は引越貧乏と言われていましたが、それも昔の話。
2020年度からは自衛隊の引っ越し代が実費支給となりました。
とはいっても、かかった費用を全て支給してくれるわけではありません。
これまで引越し代として支給されてきた「移転料」を定額とし、その3倍を上限として支給されることになっています。
で、結局それっていくらなの?って思いませんか?
この記事では「自衛隊の引越代はいくらまで支給されるのか?」を具体的に解説していきます。
ついでに"実費支給されないケース"も合わせてお伝えしていきます。
自衛隊の引っ越し手当の支給条件
まずは基本的なことから。
自衛隊の引っ越し手当の支給条件は次の通りです。
- 正式な転勤内示が出た後の引っ越しに限る
- 最低3社からの引越し見積書を提示(※内示後の日付のもの)、3社のうち最安値の料金を実費支給
- 実費支給の上限は「移転料の定額の3倍」まで
- 引っ越し代のオプション料金は含まれない
- 官舎の退去費用は含まれない
注意して欲しいのが「内示が出た後の引っ越しに限る」と言う点です。
内々示の時点で了承したからと言って引っ越しても、正式な内示が出る前の引っ越しは全て自己都合となって引越代は出ません。
また、引越代もかかった総額ではなく「荷物の運搬費のみ」実費支給です。
国家公務員の引越代「移転料定額の3倍」とは実際いくらなの?
自衛隊員を含む国家公務員は、移転料(引越代)についての規定があります。
距離や階級(役職)によってその金額は様々。
まだ、帯同か単身かで2倍近く金額が変わってきます。
では、実際のところ「定額の3倍」とはいくらなのかを説明します。
国家公務員の移転料(引越代)の定額一覧
- 2020年時点での金額で計算
区分 | 曹士 (3級以下) 定額 | 曹士 (3級以下) 定額の3倍 | 2佐~3尉 (6級以下4級以上) 准尉・曹長105号俸~ 定額 | 2佐~3尉 (6級以下4級以上) 准尉・曹長105号俸~ 定額の3倍 |
鉄道50km未満:帯同 | ¥93,000 | ¥279,000 | ¥107,000 | ¥321,000 |
単身 | ¥46,000 | ¥138,000 | ¥53,500 | ¥160,500 |
鉄道50km以上~100km未満:帯同 | ¥107,000 | ¥321,000 | ¥123,000 | ¥369,000 |
単身 | ¥53,500 | ¥160,500 | ¥61,500 | ¥184,500 |
鉄道100km以上~300km未満:帯同 | ¥132,000 | ¥396,000 | ¥152,000 | ¥456,000 |
単身 | ¥66,000 | ¥198,000 | ¥76,000 | ¥228,000 |
鉄道300km以上~500km未満:帯同 | ¥163,000 | ¥489,000 | ¥187,000 | ¥561,000 |
単身 | ¥81,500 | ¥244,500 | ¥93,500 | ¥280,500 |
鉄道500km以上~1000km未満:帯同 | ¥216,000 | ¥648,000 | ¥248,000 | ¥744,000 |
単身 | ¥108,000 | ¥324,000 | ¥124,000 | ¥372,000 |
鉄道1000km以上~1500km未満:帯同 | ¥227,000 | ¥681,000 | ¥261,000 | ¥783,000 |
単身 | ¥113,500 | ¥340,500 | ¥130,500 | ¥391,500 |
鉄道1500km以上~2000km未満:帯同 | ¥243,000 | ¥729,000 | ¥279,000 | ¥837,000 |
単身 | ¥121,500 | ¥364,500 | ¥139,500 | ¥418,500 |
鉄道2000km以上:帯同 | ¥282,000 | ¥846,000 | ¥324,000 | ¥972,000 |
単身 | ¥141,500 | ¥424,500 | ¥162,000 | ¥486,000 |
同じ階級でも号俸によって等級が変わる可能性があるので、心配な人は事前に会計担当者に相談してください。
「定額の3倍」で記載している金額までは実費で支給されるということです。
なお、実費が定額の3倍を超えた場合は財務省と別途協議となります。
財務省と別途協議になったケースをまだ知らないので、そういう体験談がある方はぜひご一報ください。
具体例:東京から札幌に引っ越した場合
規定では「鉄道距離」で区分が分かれています。
地図上での直線距離ではなく鉄道の走行距離を参考にしてください。
※「エキテン」などの乗り換えサイトを使うと、鉄道の走行距離が分かって便利ですよ。
実際に東京⇔札幌の鉄道距離を調べたところ、【走行距離1,163.3km】と出ました。
上記の表に当てはめると、1000kmの移転料の支給上限は次のようになります。
3曹で帯同なら支給上限681,000円
1尉で帯同なら支給上限783,000円
これだけ引越代の予算があれば、見積もり依頼も苦労しませんね。
東京から札幌までの引越代目安
- 階級3曹
- 扶養親族(妻1人・子供2人)
- 鉄道1000km以上1500km未満(支給上限 681,000円)
- 引越代の目安 通常期 259,000万円(費用参考はコチラ)
引越代の支給上限が68万円ほどなので、赤字になる心配はなさそうですね。
私は過去に引越し見積もりに失敗して10万円近く赤字になったのですが、自実費支給なら特に交渉しなくても赤字にならないかもしれません。
ただし!荷物が多かったり繁忙期になると、支給上限を超える見積もりを提示されることもあります。
そういうときは少しでも予算内に収まるよう交渉して、なるべく支給上限を超えないように対策をとりましょう。
引っ越し代の実費支給の為に必要な事
引越代が実費支給とはいっても、支給条件があるのでしっかりチェックしておきましょう。
実費支給されないケースもあるので注意してください。
最低3社の見積書を提出すること
- 3社以上の業者に見積書をもらう
- 見積書は内示が出た後の日付で
- 最安値の見積金額で実費支給
見積書は内訳が記載されいるものを提出しましょう。
なお、一括見積サイトを使った場合は、先にメールで概算見積もりが送られてきます。
ですが概算見積もりでは不十分です。
プラン名やオプション料金などが記載されている詳細な見積書を提出してください。
訪問見積もりの際に詳細な見積もりを出してもらえるので、それを控えておけばOKですよ。
赤字になるあケースもあり!?実費として認められない例
とはいっても、必ずしも「実費」として認められない場合もあるので覚えておきましょう。
引越代のオプション料金は支給対象外
引越代は実費支給とありますが、オプション料金は支給対象外となっています。
- 自動車・バイクの運搬
- ピアノの運搬
- ペット
- 絵画などの美術品
- 大型の趣味用品
- 段ボール引き取りサービス
- エアコン取付工事、洗濯機の設置
- 荷物の梱包・荷ほどき
- 荷物一時預かり
などなど。
つまり、実費支給とはいっても「純粋に荷物の運搬にかかった費用だけ」ということです。
自動車の運搬を依頼すると、距離によって5~8万円のオプション代がかかります。
自腹を防ぎたい人は、フェリーや高速道路を使って自分で運転していくのも赤字を防ぐポイントです。
オプション料金は自腹になるので注意してください。
3社見積もりで最安値以外の業者を選んだ場合
繁忙期の引越しにはよくあることですが、最安値の料金を提示してくれた引越し業者が必ずしも「頼みたい業者」になるわけではないですよね。
- 連絡をくれない、遅い
- 対応が悪い
- 希望日時で契約できない
などなど、場合によっては多少金額はアップしても、2番手の業者にお願いすることもありますよね。
そんな場合でも、実費支給されるのは最安値の見積金額となります。
つまり、一番安い業者との差額分は自腹となるのです。
あまりにも自腹金額が多い場合は、3社ではなく4社に見積もりを取ってもらって、一番安いけど頼みたくない業者の分は提出しないというのも手です。
官舎やアパートなどの退去費用(クリーニング代)
官舎だと原則「現状復帰」になりますが、退去する際の修繕費は官舎側となります。
以前は住んだ月数×3000円が目安と言われていましたが、令和4年に「経年劣化や通常損耗の範囲であれば修繕費は負担しなくても良い」と変わりました。
賃貸アパートでも部屋の状況によっては、クリーニング代を請求されることがありますよね。
このような退去にかかった費用は「荷物の運搬費用」には入らないので支給されません。
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友人知人に手伝ってもらった謝礼代・差し入れ代
これまでは引越代節約のために、職場の同僚などに応援要請していた人もいると思います。
でもあれって、結局のところ謝礼だったり差し入れ代が結構かかるんですよね。
引越し代が実費で出るのなら、これからは無理せずに業者に頼んだ方が、お財布には優しいかもしれません。
私も以前、夫の職場の同僚が手伝いにきてくれたことがあります。謝礼3000円×3人分+飲み物を用意したので、1万円くらいの出費となりました。
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他にも支給されないもの
- 賃貸物件に入居する時の資金・礼金・仲介料
- 新居探しの下見や内見のた為の交通費
- 引越の際に出た不用品の処分代
引越って結構色々な出費があるわけですが、引越代として支給されるのは"本当に荷物の運搬代だけ"だと思っておきましょう。
特に賃貸物件に入居する際の初期費用なんかは全額自腹です。
少しでも初期費用を押さえたい方は、オンライン対応の不動産を使うのがオススメですよ。
ちなみに、新天地までの交通費や宿泊代は別途支給されるので安心してください。
まとめ
自衛隊の引越手当(移転料)について解説してきました。
引越代の実費支給とは、かかった総額を全て支給してもらえるわけではなく「移転料定額の3倍を上限」となっています。
しかも実費として認められない部分も結構あるので、場合によっては自己負担が増えて大赤字になる可能性もあります。
事前にしっかり把握して、なるべく引越しかかる赤字を減らしていきましょう。